feature. 「YOKA」物作りのルーツに迫る。

ガレージブランドのギアが流行り始める少し前から、ウッドのパネルを組み合わせるファニチャーを世に送り出してきたYOKA。最近では焚き火台やテントなど、ファニチャーにとどまらないラインナップで注目を集めています。群雄割拠なキャプギア時代の中で、どのようにして際立つ存在と慣れているのか? ブランド代表であり、デザイナーでもある角田崇氏にお話を伺いました。

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YOKAを立ち上げたのは、
自然なことだった。
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|キャンプは、いつごろから始められたのでしょうか?

小学生の頃から親に連れて行ってもらっていました。自分で行けるようになってからも友人たちとキャンプにたまに出かけるぐらいでしたが、定期的にしてましたね。

|親の存在って大きいですよね。でもそれから自分で自発的に行き出すようになったとのことですが、キャンプの魅力とはなんだと思いますか?

なぜキャンプを続けてきたのか、なんならキャンプのブランドまでやっているかっていうことを考えてみたんですが、キャンプってチルなようでいて、体は興奮してるんですよね。そしていろいろ乗り越えた結果、快感ホルモンが分泌される。一般的に言うと“非日常”ってことなんでしょうけど、「外で食べるご飯は美味しい」「焚き火で癒される」っていうのは、わかりやすい例だと思います。キャンプギアのカテゴリーの中で、テントや焚き火台がよく売れるのは、そこで快感ホルモンが分泌された経験がより多くあるからっていうのが大きいと思いますよ。

|外ですると“なんだかいい”っていうのは、一種の興奮作用というのは面白いお話です。 そんなイチキャンパーだった角田さんが作り手側になろうと思ったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

元々会社に所属してゲームデザインなどを経験したのち、フリーで木と紙を組み合わせた「プレイデコ」という商品を自分で開発して販売していました。2014年だったと思うのですが、ある展示会に出展した時に、今でいうガレージブランドさんたちがちょこっと出られていて興味を持ったのがきっかけですね。あとは、雑誌のGOOUTさんもアウトドア×ファッションで盛り上げていましたし。これは今後来るんじゃないか?ってピンときたんですよ(笑)。

ぼくはデザインだけするんじゃなくて、自分で作って販売するまでがやりたい人なんです。会社員時代に「パイプロイド」という紙工作商品を作ったときにその経験があって、自分が作ったものが目の前で売れたときに、今まで感じたことのない高揚感を覚えた記憶がありまして。なので、ブランドを立ち上げるっていうのは、自分の中では自然なことでした。

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YOKAが主役になるプロダクトを作りたい!
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|角田さんはデザイナー出身でありあがら、経営者の目線も元々お持ちだったんですね。 YOKAは、はじめ“ウッドファニチャーのブランド”というイメージでしたが、最近は鉄やコットンなど他の素材を使ったアイテムが続々とリリースされていますよね。最近の物作りについて教えていただけますか?

ウッドファニチャーから入ったのは、インテリアが好きだったのと、プレイデコのデザインをしていたので、好きと得意をあわせたものから入ったというイメージです。ですが、ある程度バリエーションが揃ってきた2018年に、Instagramを始めたことで気づいたことがあって。

それは、“ファニチャーはInstagramの絵の中で写らない”ということでした。人や物を置いたりして引き立て役でしかなかったんですよね。そこで、メインになるものってなんだろうって考えた時に始めに作ったのが「YOKA GRIDDLE」という鉄板でした。これは焚き火台やバーナーの上に置かれるので、写真に写りやすいんです(笑)。

その反響が思ったよりもよかったので、さらにこの方向性で作ったのが焚き火台「COOKING FIRE PIT」。以降はファニチャー以外のアイテムを作ることが多くなっていますね。

|これを契機に、テントの製作に着手されましたよね。ヒット作となった「YOKA TIPI」ですが、幕体ははじめての製品だったかと思います。ティピー型にしようと思ったのはなぜですか?

ソロキャンプが自分の中でも流行っていたというのがまずあって。あとは、シークアウトサイドのシマロンというティピ型テントを使っていたというのもありますね。ティピ型の良さは、設営、撤収が早くできるので、キャンプを楽しむ時間を多く確保できるのでいいなと思っています。

また、最近「YOKA CABIN」というTC素材の居住性重視のテントをリリースしたんですが、これはお客様からYOKA TIPIのTC版を出して欲しいという要望がきっかけでした。YOKA TIPIのTCではなく、TC素材を生かせるテントをイチから設計したいと思っちゃったんですよね。せっかく自分ですべてリスク背負って事業をしているなら、やりたいことだけしかしたくないなって。売上のことを考えたら、YOKA TIPI TCを出した方がいいんですけどね(笑)。

YOKA TIPI

YOKA CABIN

|信念を曲げずチャレンジして、結果をしっかり出しているのが本当にすごいことだと思います。
ところで、見たことのないアイテムが部屋のいたるところにありまして。サンプルかもしれませんが、気になるのでご紹介ください!

興味持ってもらってうれしいです。まだ見せられないものもあるのですが、製品として仕上がってきている3品をご紹介させていただきます! 製品名や価格は、すべて仮なのでご承知おきください。

1つ目は「リゾートチェア」です。庭でくつろぐ時のアイテムをもっと快適にしたいと思っていたんです。その第1号としてこのチェアを作りました。ラタンの折りたたみチェアを外でより快適に過ごせるようにブラッシュアップさせた設計です。

キャンプシーンでももちろん使えて、YOKA CABINと一緒に使ってもらえたら嬉しいですね。価格帯は2万円弱で、来年の春夏向けリリースで考えています。

次に紹介したいのは、CABINと同じTC生地で作った小ぶりのアクティビティバッグです。キャンプ以外でもYOKAに触れてもらえるアイテムを作りたくて。大きいトートバッグはラインナップにあるのですが、ちょっとそこまでのお出かけ用として、もう少し持ち運びしやすいサイズ感のものがあってもいいなと。

キャンプ時は、温泉に行く時の着替え入れにも使えると思います。または、個人的なアイテムをガバッと入れたいときに。初期のファニチャー作りのときからですが、でかければいいってわけではない、というのはYOKAの信条でもあります。販売開始時期はこちらも来年春頃で、価格は4,000円ぐらいに抑えたいですね。

最後は、卓上のLEDランタンです。これについてはネーミングや販売時期、価格も未定なのですが、YOKAらしさが出ているかなと思うので、ご紹介させてください。

LEDランタンにしたのは、扱いやすいというのが主な理由です。僕はキャンドルが好きなので、このデザインはそれをモチーフにしていまして。それをYOKAらしくデザインに落とし込みました。

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物作りで大事なのは、色気を感じるかどうか。
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|また新たなジャンルにチャレンジされるのですね! でもこれだけさまざまなバリエーションの製作をされていても、どこか共通したYOKAらしさを感じます。ご自身で思う、YOKAらしさとはなんでしょうか?

ん〜、難しいですね(笑)。……ぼくはイギリスが好きなんです。なんでかっていうと、シンプルなんだけど、余白があって。その余白は自分の中で色気があるって感じるんですよね。それを眺めているだけで酒が飲めるようなプロダクト。そんなアイテムを作れたらと日々格闘している毎日です。YOKAのプロダクトでいうと、YOKA TIPIについているリフレクターがそれに当たります。正直リフレクターは不要だと思うんですよね。でもあれを付与することでYOKAらしさが出たかなと思います。

あとは、ひとりでできないことはやらないというのも信条です。全部自分でやりたいので、この間キャンプ場を運営したいと思ったんですが、物作りと並行しては絶対に無理だと思って断念しました。

|YOKAのアイテムは、確かにシンプルだけど窮屈じゃないデザインが心地よいですよね。どんなアウトドアパーソン向けに物作りをされているのでしょうか?

チルアクティビティを楽しみたいときに役に立てる物作りがしたいですね。なぜ線引きしたくなったかというと、アクティブなことをしている時って、キャンプサイトにいることができないので(笑)。昔釣りのロッドも出して、ハンティングするところからフォローしているのがアウトドアブランドだと思っていたんですが、アクティブなことをしている時間帯は、キャンプでチルするのに絶好の時間帯でもあります。キャンプ自体を怠ることは嫌なんですよね。

|YOKAのアイテムが快適過ごせるような設計になっているのは、そういう背景があったのですね。 それでは最後に、YOKAが今後目指す世界観はどのようなものなのでしょうか?

一人ひとりがもっと思いやりを持てる世の中になる一端を担えたらと考えています。考えることなしに物を消費するっていう流れが少し前にありました。ですが、Instagramの登場で個人がクリエイターになった。つまり、考える人が増えたんです。Instagramユーザーの考えると相手を思いやるために考えるとは異なりますが、少なくとも良い傾向だと思います。お互いがもてなしあえたら、いい世の中になると思いませんか? それはYOKAを立ち上げる前の玩具を作っていた時から変わりません。YOKAのプロダウトを通して、ビジョンに共感してくれる人が多くなれば嬉しいですね。

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